休んだ気がしない...医療現場の静かな悲鳴~医療DXは、救世主になるか~
最新の厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、医療・福祉業界の有休取得率は、68.4% (12.1日)と、全産業平均(66.9%)を上回りました 。
しかし、この「平均以上」という数字をそのまま受け取って良いのでしょうか。現場の感覚としては、依然として取れていない印象が拭えません。
現場から聞こえてくるのは、数字には表れない切実な課題です。
1. 「与えられた休み」と「取りたい休み」の乖離
多くの現場では交代制勤務のため、希望日に休むハードルが高いのが現実です。
中には、勤務シフトの都合で有休を合意のもとで割り振られるケースもあると聞きます。自発的な「権利」としての有休の取得が難しいのです。
さらに、子どもの看護や学校行事などに対応するため、児童期に必要な今の公的休暇制度が十分とは言えず、有給休暇を充てざるを得ない状況もあります。
制度の不足が現場の“遠慮”を生み、結果として「休みにくい空気」が静かに固定化していきます。
2. 属人化と「昭和の美徳」の壁
医療は専門性が高いため、業務が「特定の誰か」に依存する属人化が起きやすい構造にあります。
さらに「休みより現場を回す」という価値観を持つベテラン層が、あまり休みを取らず取得が少ない傾向にあります。
3. タスクシフトによる「歪み」
2024年4月からの医師の働き方改革の施策。医師の負担軽減のための「タスクシフト」が、準備不足のまま看護師や臨床検査技師など他職種へのしわ寄せとなり、結果として組織全体のゆとりを奪っています。
4. 悪循環のループ:赤字・人手不足・教育の停滞
昨今の経営赤字化により、多くの病院が十分な人員確保や人材投資が難しくなっています。
さらに、専門性の習得には数か月~数年単位の時間がかかるため、即戦力の確保が難しいのです。
5. 休息を阻む「勤務間インターバル」の壁
今回の調査では、次の勤務までに一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」の導入率は、わずか6.9% にとどまりました。
導入できない理由の多くは「人員不足で業務に支障が出る」というものです。
人手不足だからこそ休息が必要ですが、制度化が十分にできていません。
この構造は、疲労の蓄積を招き、医療リスクにも繋がる原因の一つになります。
現場は、常にギリギリの人数で回すことになり、さらに休みが取りにくくなっていきます。
しかし、業務量は変わらない、医療の質は絶対に落とすわけにはいかないのです。
解決の糸口は「医療DX」という救世主にあります。
社会の働き方への意識は変わってきましたが、問題は「組織の仕組み」が追いついていないことです。
業務の見える化: 属人化を排除し、誰でもフォローできる体制へ。
自動シフト最適化: 公平かつ効率的な休息の確保。
タスクの自動化: 付随業務をデジタルに任せ、専門職が「本来の業務」と「休息」に集中できる環境作り。
「人」が資本の医療業界だからこそ、「持続可能な組織設計」が求められています。
「持続可能な医療人としてのワークライフバランス」の実現のため、何が医療DXで改善できるのでしょうか。
まずは業務の棚卸しから始めることが第一歩かもしれません。
皆さんの現場では、希望日に休暇を取れていますか。

