診療報酬の「取りこぼし」はなぜ起きるのか?~本質は知識不足ではなく「構造的な設計ミス」~
多くの医療機関が直面する「診療報酬の取りこぼし」。
その原因を「知識不足」や「注意不足」で片付けてはいないでしょうか。
しかし本質はそこではありません。
問題は、医療現場特有の「職能による分断」という構造にあります。
■ 現場で起きている「職能の分断」
診療報酬の管理が医事部門に偏在することで、現場では次のような意識の乖離が生じています。
医師:「必要なオーダーを出すこと」が主眼であり、算定ルールまでは意識が回らない
検査・コメディカル:正確な実施と結果が役割であり、算定状況を確認する機会が少ない
その他の職種:各々の専門業務に注力しており、算定は「事務の仕事」という認識になりがち
その結果、「取りこぼしに誰も責任を持てない構造」が生まれています。
医療の最優先事項は、もちろん「救命と治療」です。
多忙な現場で、複雑な算定ルールをスタッフ全員が把握し続けるのは現実的ではありません。
■ 超音波検査の例(※適切な疾患名・疾患疑いがあることが前提)
例えば超音波検査では、
・同一部位は原則として同一月内1回まで
・同一領域(例:下肢動脈・下肢静脈)は同時実施しても一方のみ算定
・組み合わせによっては包括扱いとなるケースもある
(※施設基準・通知等により例外あり)
こうしたルールがある中で、「臨床的に必要だから実施したが、結果として算定できない」というケースは、現場では珍しくありません。
これは誰かのミスではなく、「見えないルール」と「分断された構造」によって生じるロスです。
■ 「仕組み」で分断を埋める医療DX
この問題は、個人の努力ではなく仕組みで解決すべき領域です。
むしろ、人に依存している限り、取りこぼしはなくなりません。
医療DXやAIにより、
・オーダー時に「同月内実施済み」などをリアルタイムで警告
・疾患名×検査の適合性や算定条件をその場でガイド
・算定不可時に代替案を提示
といった支援が可能になります。
「知らない」「気にしていない」「余裕がない」を、仕組みが自然に補完する環境をつくることができます。
そして本来、取りこぼしは、「仕組みで防げる構造的な問題」でもあります。
取りこぼしを防ぐことは、
・適正な収益確保 → 機器更新・人員確保
・業務のムダ削減 → 負担軽減・離職率低下
・医療の質向上 → 適切な検査・治療の実施
といった好循環を生み出します。
「一人ひとりの意識」に頼るのではなく、「構造と仕組みで支える医療」へ。
いま求められているのは、DXを活用して、「人に依存する医療」から「仕組みで支える医療」へ転換することだと考えます。

