医療人材をどう設計するか──人件費比率について2040年を見据えて考える

医療機関の人件費比率は、固定費の50〜60%を占め、一般的に60%を超えると危険水域と言われます。

これは、「人件費が高いから」ではなく、「人件費が高くなる構造」そのものが原因ではないでしょうか。

まず前提として、終身雇用制が医療業界においても根強いということです。これは、根本的な人件費負担に繋がります。

さらに、医療職種ごとに異なる歪みがあります。

医師
医局人事等により短期在籍が多く、長期の育成や業務標準化が進みにくい構造にあります。一方で、多施設での経験が医師のスキルアップにつながっているというポジティブな現実もあります。

看護師
女性比率が高く、結婚・出産・育児の影響、業務過多等により、離職率に繋がる傾向にあります。背景には、いまだ男性の育児参加率が低い社会構造があります。

事務職
他業種の事務職と異なり当直業務があり、他の医療専門職と比べて賃金が低い傾向にあり、離職につながりやすい傾向にあります。

技術職
離職率が低い反面、勤続年数が伸び年功序列のまま人件費が“静かに”上昇していきます。しかし、専門スキルは上がります。

さらに医療では、医療の進歩に応じ常に自己研鑽が必要です。
・専門認定取得のための研修・受験
・学会参加、研究発表
・業務外での自己研鑽
他業種以上に人材育成に「見えにくいコスト(費用と時間)」がかかります。

つまり医療の人件費問題は、「人を減らせばよい」という話ではありません。

人が辞める前提・辞めない前提が混在したまま、人材設計が更新されていないこと
ここに本質があると考えています。

まず取り組むべきことは、医療DXによる各職種の業務効率化と負担軽減、そして人材育成です。
業務の標準化、スキルの可視化、役割設計を行い、「人がやるべき仕事」と、「AIと協働する仕事」「DXで代替すべき仕事」を見極める必要があります。

その上で、2040年以降の患者減少を見据えたとき、一つの選択肢として高度医療専門人材のジョブ型雇用があると私は考えています。

他業種では一般的な雇用形態ですが、医療機関では医療の質低下などの懸念から、慎重に扱われてきました。(実際、業務委託や派遣が困難な領域も多いのが現実です)

ただし、これは「人手不足の穴埋め」であってはいけません。
・高度な専門性を持つ人材を採用する
・正社員と同等、もしくはそれ以上の待遇を用意する
・役割と成果を明確にする

この前提があって初めて、医療の質向上につながります。

実際、臨床検査の分野では、超音波検査士や血管診療技師といった高度専門人材が、施設を横断して活躍している例もあります。

重要なのは、「併用」です。

コア人材は正規雇用で育成し、組織の中核を担い、一方で、高度専門領域は柔軟に外部のジョブ型人材を活用し、組織に刺激と専門性を取り込みます。

ただ懸念点もあります。
正社員と外部人材の間に溝が生まれれば逆効果であるということ、転職市場に医療の高度専門人材がまだ少ないということです。

前者は、人材設計と、それを運用するマネジメント人材次第、また後者は、今後確実に拡大していく市場だと見ています。

「人が価値を発揮し続けられる構造を設計できるか。」
それこそが、これからの病院経営の競争力ではないでしょうか。

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